サバービア通信 名句鑑賞 今月の一句より （２０１３年４月号）

菜の花や月は東に日は西に
（なのはなやつきはひがしにひはにしに）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　与謝蕪村（よさぶそん）

「菜の花や」という言葉から広い野原一面（のはらいちめん）に咲（さ）き広（ひろ）がる黄色い菜の花が目に浮（う）かんで参（まい）ります。

その東の空には白い月がかかり、西の空には赤い大きな夕日（ゆうひ）が沈（しず）みかけているというところなのでしょう。空の紺（こん）と、菜の花の黄、月の白や日の赤が色鮮（いろあざ）やかに描（えが）かれております。

この句の作者の与謝蕪村（よさぶそん）はまた有名な画家でもありました。「わび・さび」で俳句を芸術にまで高めた芭蕉（ばしょう）が亡くなった後、俳句は月並化（つきなみか）し、衰退（すいたい）していきますが、蕪村はこのように印象鮮明（いんしょうせんめい）に美しく表現することによって俳句に新しい価値を生み出しました。

俳句が「字で描く絵」と言われたり、「写生（しゃせい）」ということが大切にされるようになったのも蕪村がきっかけであります。

中杉隆世

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